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第2講 つづりと大原則

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つづり

すでに音をおぼえた皆さんは、小学校レベルに行きましょう(少し早すぎるかもですが…)。

小学校では、漢字を学びます。幼稚園や保育園で、すでにひらがなとカタカナは学びますが、日本語の書き言葉を読むためには、漢字が必要不可欠です。

つまり、小学校に入ってから、書き言葉という大海への船出が本格的に始まります。

こどもは音から言葉を学ぶ天才ですから、小学校以前でかなり完璧です。ですからそのあとは、すぐ文字を学ぶのが適切です。

ですが、大人になると音から学ぶ能力はかなり失われてしまうため、第1講の発音はいつでも振り返りましょう。音に関しては、こどもに追いつくために常に練習が必要です。しかし、ここでは、一旦発音が完璧になったという前提で話を進めます。

この講義は、音の世界と文字の世界をつなぐ部分です。

アルファベットじゃ足りない

音は既に見たように、母音17個、子音◯個の合計◯個です。

ところで、アルファベットは何文字あるでしょうか。考えておいてください。

フランス語は、アルファベットで書かれます。欧米の言語の多くはアルファベットでかかれます。これは、またの名をラテン文字といいます。古くはローマで使われていた文字で、当時のローマで話されていたラテン語を記すために使われました。したがって、ラテン文字ともいいますし、日本ではローマ字と言う名の方が馴染みがあります。

アルファベットは26文字。対して、フランス語の音は、◯個。あれ、文字が足りません。多くの欧米の言語でアルファベットが使われていると言いましたが、フランス語だけでなく他の言語でも事情は同じで、たいてい、文字が足りません。

それでは、どうやって音を文字で表記するのでしょうか。

2通りの解決策

アルファベットでは文字数が足りない場合には、主に2通りの解決策があります。1つは、複数の文字で一つの音を代表する、2つは、ダイアクリティカルマークを使うです。

1つ目は英語でも使われています。たとえば「ちゅ」という音の子音はローマ字にはありません。たとえばchangeという単語のあたまの音はこの「ちゅ」の音。そこでは、chが使われています。ほかにも、check, cheat, chase, cheeseなど、chという文字はどれも「ちゅ」の音になります(例外はあるかもしれません)。つまり、ローマ字にない音にcとhの連続chを対応させているわけです。

2つ目は、ダイアクリティカルマークです。初めて聞いた人も多いのではないかと思います。英語には基本的にありません。フランス語では、é, è, à, â, ô, çなどの見慣れない文字が使われます(他にもあります)。これらの多くは、ローマ字では区別しきれない音の違いを示すために、小さな記号が付加されています。この小さな記号は、一般的にはダイアクリティカルマークというのですが、フランス語では「アクサン」(アクセントのこと)という方が、伝わります。

2つ目に関しては、すべての「アクサン」が、音の区別のために使われるわけではありません。日本語の古典仮名づかいのように、昔の発音を示すための印という側面もあります。

音とつづりは、一対多の関係

文字のつづりというのは、あまり変化が起きません。一方、音の方はめまぐるしく変化します。このずれが、音と文字の対応の一貫性にずれを生みます。フランス語にも多少その傾向があり、音とつづりが完全に一対一に対応しているわけではありません。

基本的には、一つの音に対してたくさんのつづりがあります。しかし、一つのつづりに対しては原則的に一つの音しかありません。この点はフランス語の学びやすい点で、英語なんかは同じつづりにいくつも発音がある場合もあるので、個人的には英語よりフランス語の方が、つづりから発音を再現するという点においては、はるかに簡単だと考えています。

読み方の大原則

ここでは、文字の読み方の大原則を2つだけ述べておきます。

これを守れば、フランス語のつづりの50%は制覇したと言っても過言ではありません。

その1ー最後の子音は読まない

1つ目は、最後の子音は読まない、です。いくつか簡単な例を挙げましょう。

pas, cas, mat, sot, tôt

どれも、語末にsかtを持っていますが、この音は発音しません。これらはすべてローマ字読みが通用するので、カタカナで書くと「パ」「カ」「マ」「ソ」「ト」になります。なんだかどれも、言い足りないような感じですね。

pasは一歩、二歩の「歩」で、不思議なことに否定の副詞、英語でいえばnotにほぼ対応する単語でもあります。

casは、英語のcase。つまり、場合という意味です。

matは、日本語で言う「マットな質感」というときの「マット」です。マットなので、マットとよみたくなりますが、原則を忘れずに「マ」と発音しましょう。しかしややこしいですが、matの女性形[^*1]は形をmateに変えて、この場合「マット」という発音になります。男性形・女性形については、またこの先でやるので、とりあえずここでは忘れてください。

sotは馬鹿という意味です。女性系はsotteとなって、発音は「ソット」です。

tôtは英語で言う、earlyで、早いという意味です。「ト」と言っただけで、ほんとうに早いという意味になるのか心配になっちゃうくらい短いですね。

CaReFuLの法則

ただ、語末の子音については、CaReFulの法則というものがあります。carefulは英語の注意深いを意味する単語で、*Careful!*っと単体で使えば、「気をつけて!」という意味になりますね。

CaReFuLの子音である、c,r,f,lが大文字になっているのには理由があって、この4つの子音には気をつけてね!、これは読むんだよ!ということを伝えているのが、carefulの法則です。例を挙げてみます。

sac, mec, mer, soir, soif, Paul

{/*

寄り道ーむしろ、s,tの法則?

この記事を書きはじめて私も気付いたのですが、「語末の子音は読まない」+「carefulの法則」というのを、「語末のs,tは読まない」=「s,tの法則」と言い換えてもいいのかもしれません。なぜならば、21個ある子音の文字のうち、語末にくるものは実はかなり制限され、実質的にはs,t,c,r,f,lがほとんどを占めているように思うからです。

読まない子音を含む単語の例を頭の中で考えてみても、どれもsとtで終わるものばかりです(mとnも読まないと言えますがこれは鼻母音になります)。そして、読む単語を思い浮かべると、どれもc,r,f,lで終わる単語ばかりです。s,t,c,r,f,lで終わらない単語もあるにはありますが、たいがいは外来語とか特殊な語で、語末は読んだり読まなかったりです。

一応、多くの参考書では、「語末の子音は読まない」+「carefulの法則」で、語末の子音の読み方を説明していますから、ここでもそれを踏襲しておきます。

しかし、その実、多くの単語がsとtで終わりそれは読まない、そしてときどきc,r,f,lで終わるものがあって、それは読む、そしてごくごく稀にそれ以外の子音で終わる単語があって、読むか読まないかはまちまち。このような、状況で、とりあえず「語末の子音は読まない」と言っておけば、大概の単語にはそれがあてはまり、ただときどきの例外はcarefulで処理し、ごく稀な例外は気合で覚えろというのが、この法則の真実だということは付言しておきます。

ただ、とりあえずは、

  • 語末の子音は読まない
  • CaReFuLの法則

の2つを頭に入れておきましょう。 */}

その2ー最後のeは読まない、あるいは、読まない子音を読ませる記号

中級になりたてくらいで、やって一番恥ずかしい間違いがこれです。わたしも、よくやりました。

フランス語では、語末のeは読みません。先程は、cas「場合」という単語を例に挙げましたが、それにeをくっつけた、caseという単語を見てみましょう。これもまた英語のcaseなのですが、今度は入れ物の「ケース」です。

フランス語のaは簡単です。単にローマ字読みをすればOK。ですので、caseという単語もローマ字読みに則って、「カーセ」と読みたくなる。しかし、これは「カーズ」[caz]とよみます。一応音声記号もつけたのは、日本語で「カーズ」というと、「ズ」に母音の「う」が入っているように見えてしまうからですが、「ズ」は母音のない子音だけの音です。また、sがzの音になっているのを不思議に思うかもしれません。これは後でやりますが、フランス語のsは語頭ではsの音で、語中ではzの音になります。

つまり、casにeを付けたcaseは、eを読まないのです。casは「カ」でありcaseは「カーズ」。見方を変えると、eがついたことによって、読まなかった語末の子音を読むようになったとも捉えられます。これは先程やった「マット」も同じで、matは「マ」ですが、eをつけたmateは「マット」[mat]になります。

まとめれば、eで終わる単語は、「eを読まない」あるいは「eの前の子音をちゃんと読んで終わる」と言えます。

初級者を抜け出して中級者に向かうあたりで、読み方の規則を忘れてしまうことがよくあります。忘れることは当たり前の過程で、学習においてはむしろ必要なプロセスですが、ここで言う2大原則を忘れてしまうと、「あなた本当にフランス語やったの?」と聞かれてしまうくらい恥ずかしい間違いになります。

今のうちに覚えちゃいましょう。そして、覚えるときのコツはいっぱい例をみることです。ですので、以下にたくさん単語を並べておきます。意味はわからなくてもいいので、とりあえず大原則をあてはめて、読んでみましょう。

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