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フランス語超入門シリーズをはじめます。
「超入門」と銘打っているので、入門よりも簡単なとってもライトな内容にしようと思っています。
ですので、これを読んだからフランス語が話せるとかフランス語が読めるとか、そうなれるわけではありません。あくまで、門に入る手前の階段が、ゆるいスロープになればいい、くらいの目的で書き進めていきます。
「超入門」なので、いままで全くフランス語をやったことがなくて今からはじめようとしてる人だけが対象のようにも思えますが、そういう人だけに向けて書くわけではありません。昔すこしやったけどほとんど忘れてしまって、また再開したいという人や、今絶賛べんきょう中だけれど、わかってるようなわかっていないような気がして、もっとフランス語をより基礎から理解したいという人にもオススメです。
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みなさんはどのような理由でフランス語を学ぶのでしょうか。
小さい頃から学んでいたなんて人は、ほんとにごく小数の特別な学校に通っていた人だけだと思います。今でもフランス語検定の会場になる暁星高校なんかは、小中高の一貫校で、小学校からフランス語をやります。かなりの名門で、有名なフランス文学者を多数輩出しています。
しかし、大半の人はそのような学校には通わないですし、大学で学びはじめるのが通常ではないでしょうか。大学には第二外国語という制度があるため、大学に通っていれば、多くの人がほとんど強制で学ばされるでしょう(英語一強時代の昨今、理系のほとんど、さらには文系の一部でも、必修でない場合が多いようですが)。 他には、フランス料理の専門学校に行く人とか、ワーキングホリデーでフランスに行きたい人とか、仕事の関係で必要になった人とか。ここまで挙げたどれも、高校を出た後の話です。
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つまり、大半のフランス語を学ぶ人は、ある程度大人になってからはじめるわけです。
子どもが学習するときは、子どもなりの特権がありますが、大人が学習するときには、大人なりの特権があります。子どもは、概して耳がよく、聞き取りや発音の点では、大人より一歩先んじていることが多いです。
ですが大人は、知識や経験、そこから導かれる論理的思考という、特別な能力を持っています。これに偏りすぎてもだめなのですが、ある有名なことわざ?名言?があります。知っている方も多いかもしれませんが、‘Younger is further, older is faster. ‘というものです。若いほうがより遠くに行ける、つまり、最終的な到達点はよりうまくなる。しかし、大人の方が、ある一定の到達点に行くにはより速く行けるということです。
わたしは、これを可能にする理由が、大人の知識や経験だと考えています。
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「超入門」シリーズは、faster を実現するための、エンジンというのか、アクセルペダルというのか、そういう感じのものです。ここでの話をいつでも頭に入れておくことで、フランス語学習がより効率的に進められるという、確固たる知識になるものです。
ですので、キソ中のキソとも言えるわけです。建物は、基礎がなければ、倒壊してしまいます。「超入門」は別に無くても、倒壊はしませんが、このキソがあれば、その上に安定した知識が着実に積み重なっていく。そうすることで、不安定な積み木をする人よりは、何倍も速く一定のレベルに到達できます。
建物のキソは一番はじめにしか造ることができませんが、ここでのキソはいつでも組み直せます。ですので、今から学びはじめる人だけでなく、現在学習中の方が、振り返っても役に立つものだと思います。また、一度読んだ後でも、もう一度読み直すことで、さらなる基礎固めができるはずです。
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[第1講義は「おと」についてです。]
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第1講を音から始めるのは、ある程度意図があってのことです。
振り返ってみれば、わたしたちはどのように言葉を学んできたのでしょうか。
きっと赤ちゃんの頃に、母親が盛んに話しかける言葉を聞いて、世界には言葉があるということを知る。そしてそれを真似して、最初の言葉を発音したのでしょう。この過程に文字は介入していません。
しかし振り返ってみると、わたしたちが初めて外国語、すなわち英語を学ぶとき、はじめは教科書に書いてある文字から学びます。
今手元にあるいくつかのフランス語の教科書をみても、まずは文字から始まり、そのあと文字の発音が提示されるという順が基本です。つまり、順番が逆転しているのです。
歴史を見ても、楔形文字やヒエログリフなど、初期の文字が発明されたのは、約5000年前程度です。一方で、ホモサピエンスの歴史は、20万年以上ですから、文字の歴史というのは、人類全史の2.5%以下に過ぎません。
わたしたちの言葉は本来、音なのです。
実際に聞いてみる
では早速リアルなフランス語を聞いていただきたいと思います。なんとなくオシャレそうとか、なんとなくかっこよさそうとかいう、漠然としたイメージはあるかもしれませんが、実際にフランス語をしっかりと聞いたことのある人は以外にいないかもしれません。Youtubeにあった、Stromaë(ストロマエ)という歌手の、ショート動画です。
https://www.youtube.com/shorts/QED_XPi74gw
どういうふうに聞こえたでしょうか。人それぞれに色々な印象を得たかと思います。
ある言語に堪能な国文学の教授がいっていたのですが、その人には「じょぼじょぼじょぼ」に聞こえるらしい。私には「ドボドボドボ」とか「ダバダバダバ」とか「ボボボボ」にも聞こえる。また、ときどきうがいをしている気もする。ある友人の言うには、フランス語の音は、はじめ想像したよりも汚い。Rの音が痰を切るみたいだと。これらは、まっさらな気持ちで、純粋な音としてフランス語を聞いた際の印象で、ある面において的を射ているように思えます。
このジョボジョボ感を演出する主な要素は、鼻母音だと考えています。何かこう常に膜を張っているというのか、マイク越しに聞いているというのか。この印象を作るのが鼻母音。音声学的に言うと呼気を鼻から出す音ですが、感覚的に言うと、ちょっといやらしい声です。ひらがなにすると「あん」とか「おん」となります。
鼻母音
鼻母音が話題に上がったので、鼻母音から話しましょう。読み方は「ビボイン」です。基本的には日本語にも英語にもない音ですので、フランス語を学んだことのない人は初めて出会う音だと思います。フランス語の兄弟であるイタリア語やスペイン語にも鼻母音はありません。同じく兄弟のポルトガル語にはあるようですが、鼻母音というのは、どちらかといえば少数派の存在です。これをマスターすると、ぐっとフランス語らしい音に近づきます。
基本的には、「おん」([ɔ̃])+「あん」([ɑ̃][ɛ̃][œ᷈])×3の4種類です。
「おん」を例に取ると、途中まではシンプルな「お」の音です。しかし、途中から「ん」に変わります1。この時に起きているのが、「鼻から息が抜ける」ということです。どんな音でも多少は鼻から息が抜けるのですが、その量が大きくなると「ん」っぽく聞こえます。また「鼻から息が抜け」ていても、すべての息が鼻から抜けているわけではありません。あくまで、鼻から抜ける息の量が普通より多いと「ん」と聞こえる感じです。
つまり、「おー」と普通に言ってみて、途中から鼻から抜ける息の量を大きくすると、結果的に「おん」と聞こえます。これが鼻母音です。
こつは、「おー」から「ん」に移る時に、舌をどこにもつけないことです。日本語の「ん」は実は、対応する音声が5種類くらいあるのですが、そのほとんどは舌が口の中のどこかにつきます。しかし、鼻母音の場合、舌は口内のどこにもつきません。日本語の「ん」は基本的に、舌が口内のどこかにつきますから、日本語の「ん」の気分で発音してしまうと、上手く行きません。 ですので、「舌は口の中のどこにも絶対につけず」に、「ん」と聞こえるように鼻から息を抜いてみる練習をすると、上手く発音ができます。
5つの「う」
フランス語には、「う」が5つあります。正確に言うと、日本語で聞くと「う」に聞こえる音が5種類あります。どれも、フランス人にとっては全く違う音なのですが、日本人にはすべて同じに聞こえるという、もはや怪奇現象なみのことが起こります。
そもそも、フランス語には、母音がたしか17個くらいあります(正確には覚えていない)。一方日本語は、あいうえおの5個。母音の数をみると、信じられないくらいの差があるわけです(数え方にもよりますが英語は20以上あるそうです)。日本語は母音の数がかなり少ないのです。ですから、基本的に日本人が外国語を学ぶときには、発音にだいぶ苦戦するわけです(イタリア語とスペイン語は日本語と母音の数がほぼ同じで、よく簡単と言われます)。
さて、フランス語で一番苦戦するのが、「う」。上級者でも、この音を完璧に発音し分けている人は稀です。音声記号で、一覧にすると以下です。
それぞれに注意点やコツがありますが、ざっくり言うと1と2と3,4,5で分けられます。
u
1は、日本語の「う」を思いっきり狭くすぼめた感じの音。唇がひょっとこになるまで、口をすぼめて「うー」といいましょう。実は一番簡単なようで、ムズカシイ音でもあります。日本語の「う」で発音すると、ネイティブには5番目の音と勘違いされます。授業を意味するcoursと心を意味するcoeurという単語は、日本語ではどちらも「クール」という発音ですが、授業のつもりで発音したのが、心の意味に取られることがよくあります。
恥ずかしがらずに、口を思いっきりすぼめる! これが一番大事です。
y
2は、とても難しいですが、日本語では「う」というより、「ゆ」に聞こえます。ただ、日本語の「ゆ」とは全く違う音なので注意。中級くらいの人でも、日本語の「ゆ」を使っている人は多いので、変なクセが付く前に、早めにマスターするのが吉です。
習うより慣れろで、ひたすら聴いて真似るのが一番ですが、いちおうコツはあります。「いー」と言いながらだんだんと口をすぼめていく。あるいは、「うー」と言いながら、舌先をくちびるに近づける。どちらも最終的には1,くちびるがまるい、2.舌先が緊張している、という2つの条件が満たされています。それを、どの順番でやるかの問題で、ようは舌先に力を入れながらくちびるを目いっぱい丸める感じです。ただ、難しいです。ひたすら聴いて練習してみましょう。
その他
3,4,5は、実は似通った音です。全部4にしても、フランス人には通じます。なので、躍起になって言い分ける必要はありません。上級者でも、これをいい分けている人は少数です。さきほど、フランス人は5種類すべて聞き分けられると言いましたが、とくに3と4の聞き分けはネイティブでも結構難しい。そして、4は雑に発音すると、5に近づきます。つまり、これらの音は、互いに交換可能な場合も多いです。
しかし、わたくしとしては3と4は混ぜてもOK。3,4と5は区別して練習した方がいいと考えています。
Rの音ーうがいあるいは痰切り
よく学習を始めたばかりの人が、難しいという音です。フランス語は発音が難しい、ほらあのRの音が変じゃん。といって、フランス語の発音の難しさの代名詞にも使われます。
ですが、実は慣れてしまえば、他のむずかしい音よりは簡単だったりします。いや、難しいからこそ、みんな練習して、ある程度できるようになります。
Rと言えば、日本語に音写すると「ら行」になるのですが、大胆に言ってしまえば、この音、「は行」に聞こえます。実際に、中級者くらいで、この音をときどき日本語の「は行」で代替する人もいます。わたしも、雑にしゃべっているときには、ときどき「は行」になってしまうことがあります。
たとえば、「マカロン」を例に取ると、3文字目に「ロ」がありますね。ただ、ネイティブの「マカロン」の発音を純粋に聞けば、「マカホン」と聞こえます。ですのでみなさん、文字にするときは「ら行」にしなきゃいけないのですが、実際の音は「は行」に近いことを肝に命じておきましょう。
しかし、日本語の「は行」とは、似て非なるものです。よくうがいの音といわれますが、これが一番的を射ている、というより正確な表現だと思います。小難しいことをいうと、口蓋垂(コウガイスイ)摩擦音といいます。このコウガイスイというのは、「のどちんこ」のことです。うがいのときにがらがらするのは、「のどちんこ」と「舌の根元」が近づいて、その間を空気が通ったときに、「のどちんこ」が揺れるからです。
本質は、「のどちんこ」と「舌の根元」が近づいて、その間を空気が通過することです。ですので、「のどちんこ」が揺れてがらがら聞こえる必要は実はないんですが、学び始めのときは、意識的にがらがらさせるくらいがいいと思います。ガラガラさせ続けると、コウガイスイと舌の間を空気が通っていく感覚が段々と掴めてきます。なれてきたら、ガラガラせずとも、空気が通過する音が出せます。割と澄んだ音です。
つまり、ガラガラ➙澄んだ音という流れを目指しましょう。
......Footnotes
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正確に言うと、ほとんど最初から「ん」に近い音なのですが。説明のために途中から変わるとしておきます。 ⤴
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すでに音をおぼえた皆さんは、小学校レベルに行きましょう(少し早すぎるかもですが…)。
小学校では、漢字を学びます。幼稚園や保育園で、すでにひらがなとカタカナは学びますが、日本語の書き言葉を読むためには、漢字が必要不可欠です。
つまり、小学校に入ってから、書き言葉という大海への船出が本格的に始まります。
こどもは音から言葉を学ぶ天才ですから、小学校以前でかなり完璧です。ですからそのあとは、すぐ文字を学ぶのが適切です。
ですが、大人になると音から学ぶ能力はかなり失われてしまうため、第1講の発音はいつでも振り返りましょう。音に関しては、こどもに追いつくために常に練習が必要です。しかし、ここでは、一旦発音が完璧になったという前提で話を進めます。
この講義は、音の世界と文字の世界をつなぐ部分です。
アルファベットじゃ足りない
音は既に見たように、母音17個、子音◯個の合計◯個です。
ところで、アルファベットは何文字あるでしょうか。考えておいてください。
フランス語は、アルファベットで書かれます。欧米の言語の多くはアルファベットでかかれます。これは、またの名をラテン文字といいます。古くはローマで使われていた文字で、当時のローマで話されていたラテン語を記すために使われました。したがって、ラテン文字ともいいますし、日本ではローマ字と言う名の方が馴染みがあります。
アルファベットは26文字。対して、フランス語の音は、◯個。あれ、文字が足りません。多くの欧米の言語でアルファベットが使われていると言いましたが、フランス語だけでなく他の言語でも事情は同じで、たいてい、文字が足りません。
それでは、どうやって音を文字で表記するのでしょうか。
2通りの解決策
アルファベットでは文字数が足りない場合には、主に2通りの解決策があります。1つは、複数の文字で一つの音を代表する、2つは、ダイアクリティカルマークを使うです。
1つ目は英語でも使われています。たとえば「ちゅ」という音の子音はローマ字にはありません。たとえばchangeという単語のあたまの音はこの「ちゅ」の音。そこでは、chが使われています。ほかにも、check, cheat, chase, cheeseなど、chという文字はどれも「ちゅ」の音になります(例外はあるかもしれません)。つまり、ローマ字にない音にcとhの連続chを対応させているわけです。
2つ目は、ダイアクリティカルマークです。初めて聞いた人も多いのではないかと思います。英語には基本的にありません。フランス語では、é, è, à, â, ô, çなどの見慣れない文字が使われます(他にもあります)。これらの多くは、ローマ字では区別しきれない音の違いを示すために、小さな記号が付加されています。この小さな記号は、一般的にはダイアクリティカルマークというのですが、フランス語では「アクサン」(アクセントのこと)という方が、伝わります。
2つ目に関しては、すべての「アクサン」が、音の区別のために使われるわけではありません。日本語の古典仮名づかいのように、昔の発音を示すための印という側面もあります。
音とつづりは、一対多の関係
文字のつづりというのは、あまり変化が起きません。一方、音の方はめまぐるしく変化します。このずれが、音と文字の対応の一貫性にずれを生みます。フランス語にも多少その傾向があり、音とつづりが完全に一対一に対応しているわけではありません。
基本的には、一つの音に対してたくさんのつづりがあります。しかし、一つのつづりに対しては原則的に一つの音しかありません。この点はフランス語の学びやすい点で、英語なんかは同じつづりにいくつも発音がある場合もあるので、個人的には英語よりフランス語の方が、つづりから発音を再現するという点においては、はるかに簡単だと考えています。
読み方の大原則
ここでは、文字の読み方の大原則を2つだけ述べておきます。
これを守れば、フランス語のつづりの50%は制覇したと言っても過言ではありません。
その1ー最後の子音は読まない
1つ目は、最後の子音は読まない、です。いくつか簡単な例を挙げましょう。
pas, cas, mat, sot, tôt
どれも、語末にsかtを持っていますが、この音は発音しません。これらはすべてローマ字読みが通用するので、カタカナで書くと「パ」「カ」「マ」「ソ」「ト」になります。なんだかどれも、言い足りないような感じですね。
pasは一歩、二歩の「歩」で、不思議なことに否定の副詞、英語でいえばnotにほぼ対応する単語でもあります。
casは、英語のcase。つまり、場合という意味です。
matは、日本語で言う「マットな質感」というときの「マット」です。マットなので、マットとよみたくなりますが、原則を忘れずに「マ」と発音しましょう。しかしややこしいですが、matの女性形[^*1]は形をmateに変えて、この場合「マット」という発音になります。男性形・女性形については、またこの先でやるので、とりあえずここでは忘れてください。
sotは馬鹿という意味です。女性系はsotteとなって、発音は「ソット」です。
tôtは英語で言う、earlyで、早いという意味です。「ト」と言っただけで、ほんとうに早いという意味になるのか心配になっちゃうくらい短いですね。
CaReFuLの法則
ただ、語末の子音については、CaReFulの法則というものがあります。carefulは英語の注意深いを意味する単語で、*Careful!*っと単体で使えば、「気をつけて!」という意味になりますね。
CaReFuLの子音である、c,r,f,lが大文字になっているのには理由があって、この4つの子音には気をつけてね!、これは読むんだよ!ということを伝えているのが、carefulの法則です。例を挙げてみます。
sac, mec, mer, soir, soif, Paul
{/*
寄り道ーむしろ、s,tの法則?
この記事を書きはじめて私も気付いたのですが、「語末の子音は読まない」+「carefulの法則」というのを、「語末のs,tは読まない」=「s,tの法則」と言い換えてもいいのかもしれません。なぜならば、21個ある子音の文字のうち、語末にくるものは実はかなり制限され、実質的にはs,t,c,r,f,lがほとんどを占めているように思うからです。
読まない子音を含む単語の例を頭の中で考えてみても、どれもsとtで終わるものばかりです(mとnも読まないと言えますがこれは鼻母音になります)。そして、読む単語を思い浮かべると、どれもc,r,f,lで終わる単語ばかりです。s,t,c,r,f,lで終わらない単語もあるにはありますが、たいがいは外来語とか特殊な語で、語末は読んだり読まなかったりです。
一応、多くの参考書では、「語末の子音は読まない」+「carefulの法則」で、語末の子音の読み方を説明していますから、ここでもそれを踏襲しておきます。
しかし、その実、多くの単語がsとtで終わりそれは読まない、そしてときどきc,r,f,lで終わるものがあって、それは読む、そしてごくごく稀にそれ以外の子音で終わる単語があって、読むか読まないかはまちまち。このような、状況で、とりあえず「語末の子音は読まない」と言っておけば、大概の単語にはそれがあてはまり、ただときどきの例外はcarefulで処理し、ごく稀な例外は気合で覚えろというのが、この法則の真実だということは付言しておきます。
ただ、とりあえずは、
- 語末の子音は読まない
- CaReFuLの法則
の2つを頭に入れておきましょう。 */}
その2ー最後のeは読まない、あるいは、読まない子音を読ませる記号
中級になりたてくらいで、やって一番恥ずかしい間違いがこれです。わたしも、よくやりました。
フランス語では、語末のeは読みません。先程は、cas「場合」という単語を例に挙げましたが、それにeをくっつけた、caseという単語を見てみましょう。これもまた英語のcaseなのですが、今度は入れ物の「ケース」です。
フランス語のaは簡単です。単にローマ字読みをすればOK。ですので、caseという単語もローマ字読みに則って、「カーセ」と読みたくなる。しかし、これは「カーズ」[caz]とよみます。一応音声記号もつけたのは、日本語で「カーズ」というと、「ズ」に母音の「う」が入っているように見えてしまうからですが、「ズ」は母音のない子音だけの音です。また、sがzの音になっているのを不思議に思うかもしれません。これは後でやりますが、フランス語のsは語頭ではsの音で、語中ではzの音になります。
つまり、casにeを付けたcaseは、eを読まないのです。casは「カ」でありcaseは「カーズ」。見方を変えると、eがついたことによって、読まなかった語末の子音を読むようになったとも捉えられます。これは先程やった「マット」も同じで、matは「マ」ですが、eをつけたmateは「マット」[mat]になります。
まとめれば、eで終わる単語は、「eを読まない」あるいは「eの前の子音をちゃんと読んで終わる」と言えます。
初級者を抜け出して中級者に向かうあたりで、読み方の規則を忘れてしまうことがよくあります。忘れることは当たり前の過程で、学習においてはむしろ必要なプロセスですが、ここで言う2大原則を忘れてしまうと、「あなた本当にフランス語やったの?」と聞かれてしまうくらい恥ずかしい間違いになります。
今のうちに覚えちゃいましょう。そして、覚えるときのコツはいっぱい例をみることです。ですので、以下にたくさん単語を並べておきます。意味はわからなくてもいいので、とりあえず大原則をあてはめて、読んでみましょう。
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英語に「三単現のs」というものがあったのを覚えているでしょうか。
「三単現」というのは、「三人称」・「単数」・「現在」の頭文字を取ってくっつけたものです。主語が「三人称」かつ「単数」で、動詞が「現在」のときに、動詞にsがつくんでしたね。
三人称というのは、主語の種類を指しています。一人称が「わたし」、二人称が「あなた」、三人称は「それ以外」です。したがって、「彼」とか「彼女」とか「それ」とかのことです。「単数」は、一人ということです。「彼ら・彼女ら・それら」ではなく、「彼・彼女・それ」のことです。
現在というのは、今のことを話すときに使う動詞の基本形でしたね。しかし、過去のことを話すには過去形を使い、今進行中のことを話すには現在進行形を使いました。
3つの条件は、それぞれ「一人称・二人称・三人称」、「単数・複数」、「現在形・過去形・現在完了形…etc」という、複数の組み合わせがあります。つまり、英語では「三単現」のときだけ、動詞にsという語尾をつければよかったのです。
実はフランス語では、この3つの条件のすべての組み合わせで、それぞれに特別な語尾をくっつけなければいけません。「三・単・現」にも特別な語尾が必要ですし、「一・単・現」にも特別な語尾が必要ですし、「二・複・過(過去)」にも特別な語尾が必要です。
絶望的暗記
3つの条件を一覧にすると以下のような感じになります。
- 人称
- 数
- 時制(+法)
さて、ちょっとした算数をやってみましょう。
「人称」は「一人称・二人称・三人称」の3つ。「数」は「単数」と「複数」の2つ。「時制」は、「現在・半過去・複合過去・大過去・単純未来・前未来・条件法現在・条件法過去・単純過去・前過去・接続法現在・接続法半過去・接続法過去・接続法大過去」の14個!?。
3×2×14で、84。んんん?、一つの動詞の変化形が84個。さらに、動詞変化のパターンは、規則動詞が2種類、不規則動詞は、約80。計算を簡単にするために80としましょう。
84×82=約7000。あれあれ?、約7000個の変化を覚えなきゃいけない?。待て待て、単語7000個覚えるのだって大変なのに、それに加えて動詞の変化形を7000個覚えなきゃいけないだって!!!
絶望。やめたくなった。よしやめよう。
待て待て待て。人間が話す言葉なんだから、そんなに覚える必要があるわけない。フランス人が、日本人より記憶力に優れているなんてことは、ないない。
少し計算のずるをしました。上で挙げた14の時制のうちいくつかは古風で現在は使わず、そのうちのいくつかは、英語の現在完了のように「have」+「過去分詞」のような形になるので、実質的に「have」の変化と「過去分詞」を覚えれば大丈夫です。
細かい話しをすると脱線してしまうので、ざっくりいうと時制は4つに減ります。ですので、最終的な計算は、
3×2×4×82=約2000。うむ、全然減ってないではないか(●`ε´●)
実はもっと減ります。82パターンとはいいましたが、そのうちのいくつかはほとんど似通っていて、微妙なマイナーチェンジがあるだけです。もうわ私の感覚ですが、だいたい20パターンとしておきましょう。2000が4分の1になって、500!。だんだん太刀打ちできそうな数字になってきました(いやまだ多いだろ)。
今回あつかうのは3つの条件のうち、1の「人称」と、2の「数」です。3の「時制」はまた次回にまわします。このあとの語感や語尾の話を踏まえると、実は500がもっと減っていきます。
だらだら書いていたら長くなったので、続きは次の記事にします。
[続く]
...... - Updated
基本パターンは3種類
前回は不吉な計算をして、7000個くらい動詞変化を覚えなきゃいけないとおどかしましたね。ただ結局は500個くらいに成るという結論でした。
動詞の変化のパターンは80種類くらいあるといいましたが、大きな分類では3つになります。一覧にしてみましょう。
- 第1群規則動詞(-er動詞)
- 第2群規則動詞(-ir動詞)
- 第3群動詞(不規則動詞)
正直に言うと、非常に雑な分類ですね。第1群と第2群と、、それ以外全部!ッて感じです。学習の順番は1群と2群を覚えた後に、不規則な第3群を個別にコツコツと覚えていく流れになります。
語幹が大事
英語の過去形を思い出すと、ほとんどの動詞は動詞の原形にedをつけるんでしたね。この考え方は非常に重要で、大元があってそこにちょびっと何かをつけるというのが動詞変化の基本です。
ここでいう大元を語幹といいます。(語感ではありません。変換機能が邪魔をします)つまり、ことばの幹です。ゆるぎない、動かない部分です。
1群と2群の大きな特徴は、語幹がどの時制どの法どの人称でもほとんど変わらないことです。つまりまずは語幹を覚えるのが大事。
語尾を覚えよう
語幹を覚えたら、次は語尾です。英語の例であげたedにあたるものですね。木の幹にちょこっと枝をつけるだけです。ただ、この語尾、たくさんあるので大変です…。英語はわたしが言おうが、あなたが言おうが、彼が言おうが、ずっとedをつければよかったのですが、フランス語は、誰が言うかで語尾が変わるのです。
人称代名詞はまだちゃんとみたことがなかったですね。以下に一覧で挙げておきましょう。
日本語 フランス語 わたし je あなた tu 彼・彼女 il, elle わたしたち nous あなた(丁寧or複数) vous 彼ら・彼女ら ils, elles いくつかの注意点を。vousに丁寧とありますが、英語のyouと違い、フランス語は親しい相手に使うあなた(tu)と知らいないあるいは目上の人につかうあなた(vous)を区別します。これが、日本語でいう尊敬語や丁寧語の機能を一種担うわけです。インドヨーロッパ言語ではふつうのことで、英語もかつてはそうでしたが、いまはすべてyouになってしまっています。
朗報 90%は第1群規則動詞
朗報です!
フランス語動詞の90%は第1群規則動詞!
どんな文法書も-erで終わる動詞の変化はさいしょのさいしょの方に書かれています。それくらい重要だからです。これを完璧にすれば90%をマスターできるなんて。急がば廻れ。ゆっくり覚えましょう。ここで、aimer(愛する)、manger(食べる)、regarder(見るwatchの方)の直接法現在形の人称変化表を挙げておきます。
aimer manger regarder aime mange regarde aimes manges regardes aime mange regarde aimons mangeons regardons aimez mangez regardez aiment mangent regardent 第2群規則動詞も簡単
finir, choisir, réussir
Bad News 使用頻度上位の動詞ほど不規則
喜びもつかの間、暗雲立ち込める。
-er動詞と-ir規則動詞で、全体の90%以上はカバーできます。しかし、ここには数字の罠が潜んでいる……。こむずかしくいえば、同様に確からしくないのです。例えば、爆発するとか、憤慨するとか、疾走するとか、そんな動詞が-er動詞だったとして、日常で使う頻度は少ない……。見るとか、持つとか、できるとか、日常でよく使う動詞は、軒並み不規則なのです。1群と2群を覚えるだけでは、やっぱり不十分です。
実際に見てみましょう
aimer, finir, dormir
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フランス語の語順はSVOです。
これ以上あまり言うことも無いのですが…
せっかくなので、他の言語と比較してみましょう。
日本語の語順は何でしょうか。SOVですね。
そもそも主語があまり出てこない日本語ではOVで事足りることも多く、わたしたちにとっては、母語であるのでその語順に気を配ることも少なく、普段はあまり意識しません。
ドイツ語なんかは、その実SOVであるとも言われます。主文だけはSVOなのですが、副次的要素は基本的にSOVです。わたしも少しだけドイツ語を勉強しますが、日本語と同じでやりやすいはずだと思いきや、ラテン文字で書かれている言葉は全部SVOだろうと、脳みその髄の髄までインプットされているため、逆にやりにくいです。
さて、繰り返しますが、フランス語の語順はSVO ! SVO !です。よかったですね。英語となんらかわりありません。
例外ー「ジュテーム」と「ジュレーム」
が、ときどきSOVになるので、注意です。
みなさんも、「ジュテーム」というフランス語が「あなたが好き」を意味することはご存知かもしれません。これは実は、SOVという語順になっています。
英語の対応物を逐語的に当てはめると、I you Loveとなります。
この語順になるのは、本当に一部の状況だけです。本当に一部の状況だけなのですが、出現頻度は割と多いため、総合的に考えればそれなりに重要です。
しかし、改めて言っておきますが、フランス語はSVO ! SVO ! それほど気にする必要はありませんが、少しだけ注意してねくらいのことです。
どういう状況でSOVになるかというと、目的語が代名詞のときです。「ジュテーム」の場合、「あなた」という代名詞が使われるため、SOVの順番になります。
あとは、「ジュレーム」という洗剤だか柔軟剤だかのブランドを知っているでしょうか(追記:シャンプーでした)。知らなくても大丈夫ですが、ほとんど「ジュテーム」と同じですね。これは英語に対応させると、I it Loveです。ここでも、「それ」という代名詞が使われるので、SOVの順番になります。
ただ、やっぱりフランス語はSVO ! 目的語が代名詞でない、普通の名詞であれば、SVOです。語順に関しては、英語とほぼ同じと覚えておきましょう。
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フランス語超入門
フランス語の入り口の入り口