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東京青年ブルージー

ポケットに刃をつっこんで
今日も 東京の街をあるいてる
青いシルエットの歩行人たちの朗らかな笑みに
まったく苦笑をしてしまう

おれはこんなに真剣というのに
アイツらといったらのんきなかほで
いきもののほんとの色を忘れてやがる
おっとあぶねえ 肩がぶつかった
武器に気づいちゃいないかな

おっとあぶねえ 無意識に
ポケットの中でもてあそぶ
いつだって 出かけるときは研ぎ澄まし
うつむき加減で街をゆく

自分のゴム靴の軋りにイヤに琴線を刺激され
呼吸の擦過音が耳もとで反響する 蒸し暑い夏の午後 
ひとり 青い影の群衆に溺れている

突き立てられたナイフ
裂け目から 哀しくも血しぶきは溢れ出す
突き刺すたび わたしの心臓より 溢れ出す
細胞の蠕動と存在の厚みを掌握する喜び
自傷行為のオルガスム

ただ 哀しくも これは悪い血だ\

哀しくも これは悪い血だ
わたし以外の存在たちを汚さないために わたしは遠く最果てへ
わたしの内殻のひび割れから 葡萄色の鮮血が流れ続け
怪物 怪物 怪物
ただ 孤島の肉塊になり果ててしまった